少し前、リハビリメイクを受けるために、スタジオに五十歳くらいの夫婦が訪ねてきました。カルテによると、奥さんは若いころに交通事故で顔を怪我したことがあり、その手術痕が気になっている、なんとかメイクで消したいということのようでした。実際に会ってみると、縫合痕なんて顎の下にかすかに見えるだけ。五十歳になってから急に気にしはじめるのはヘンです。うつむきかげんで、涙ながらに事故と手術の事情を説明する奥さん、それを心配そうに見守る優しそうなご主人。話を聞いてみると、急に元気をなくした奥さんをスタジオに連れてきたのはご主人のほうだという……。ああ、わかった、と思いました。奥さんは「若いころはさぞきれいだったでしょう」と言われそうな細面の美人顔。彼女がつまずいているのは昔の傷なんかじゃない、美しかった自分の顔に「老い」がしのびよっているのが不安なのです。でもそれをストレートに認めることができず、小さな傷痕に不安を転嫁していたのです。こういう女性に必要なメイクは、アンチエイジング。わたしは、血流マッサージで肌のたるみ、しわを取り、カバーリングファンデーションで肌色を若くととのえ、眉をしっかり描き、うんと若い顔をつくってあげました。すると、メイクを終えて鏡をのぞいたとたん、彼女の顔が輝きました。
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